LDSP(LEICA Digital Scaling Project : ライカ デジタル スケーリング プロジェクト)2のフィールドワークでは中田研究室が震災以降、復興支援プロジェクトとして拠点を置いている宮城県南三陸町戸倉長清水(とくらながしず)の浸水域である低地部分の実測を4月28日から30日の3日間にわたり実施しました。このフィールドワークから出た計測値はデータ化し、今後の低地部分の活用方法の提案や高台移転などのプロジェクトに利用されます。
フィールドワークを行う半年ほど前から宮城大学や長清水にてLeica Geosystemsの方と共にいくつかの距離計を使用した実験を行ってきました。その結果から約直径1kmほどの長清水の細かな敷地を計測するにはビルダーが適していることが確認でき、計測方法の検討などがはじまりました。
計測方法は測定値データを3Dで起こし地形を理解することを想定したメッシュ測量とし、事前に地図上に縦横20m間隔で計測ポイントを設定しました。
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計測ポイント |
現地では全体のメッシュ測量にはビルダー、横縦の20m間隔を測量するのにはレーザー距離計のディスト、の2機を使い分けながら使用することで効率を上げることとしました。
ビルダーは計測ポイントにプリズムを置くことで距離を計測するため、測量ポイントにプリズムを持っていく必要があります。
これは実際には足場が悪い箇所や傾斜の強い箇所などがありプリズムを計測ポイントに持っていく事が難しく、計測が不可能となった場面が幾度かあり、そのつど計測ポイントの変更をし作戦を立てながら進めていくこととなりました。
また計測地には建物の躯体やコンテナなどがあるため、それを避けながらの計測はビルダーの配置にも検討が必要であり、現地ならではの問題と直面し、時間を要することとなりましたが、長清水集落の方にも地形のアドバイスと計測の協力を頂き計測を終えることができました。
昨年の6月上旬から長清水に訪れていますが今回の実測により低地から山間に向けての高さ関係、傾斜角などの理解を深めることができました。
今回の実測を行った事で、私自身の距離感や高さ感覚の相違点を確かめることができました。特に傾斜地では登る事ができるだろうと思っていた山も実際には困難であった事など、地図や模型で地形を読み取る事が多かった私にとって、とても重要な気づきとなりました。
このフィールドワークでの経験は自分自身の地形の読み取りの整合性を高ただけでなく、今後の低地の利用の計画や、高台への避難経路のなどを計画する上でとても重要なプロジェクトであり、様々なプロジェクトにおいて、より現実身的な取り組みができてくると感じました。
震災以降、長清水の低地部分の測量を目指して、何度も実測の実験を行って参りました。中田研究室では4月のフィールドワークを実施する前から低地の利用方法の検討をしていましたが、模型と地図を前にしての検討は難しく、想像の難しい部分もありました。その問題点を抱えている中での今回の測量は、今後の長清水の将来を考える上でとても発展的なプロジェクトとなりました。このプロジェクトは学生の中でも大学院生のみの参加でしたが、この測定値をデータ化し、様々なプロジェクトに汎用させることで多くの人がより現実的な想像のできるツールとなると感じました。その第一段階に参加できた事に本当に嬉しく思っております。この経験を長清水のみならず様々な場面で活かせることを自分自身期待しております。
ありがとうございました。
宮城大学事業構想学研究科博士前期課程2年
武田恵佳